DX人材_サムネイル
DX人材

【60分でわかる】DX人材のすべて

2023年8月1日

目次Category


現在、DXが経済産業省を中心に日本企業のビッグトレンドとなっています。
その中でもDXを推進していく人材の確保が最大の問題となっている状況から、本記事では、そもそもDXとは何なのか、そんなDXを担うDX人材とはどんな人材なのかという言葉の定義からDX人材の採用・育成方法まで網羅的に紹介していきます。

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉はスウェーデンのストルターマン教授によって2004年に提唱された概念です。 
“デジタルに変容(トランスフォーム)する”という直訳の通り、生活やビジネスなどを含めた社会がデータや情報通信などのデジタル技術に対応すべく変革することを指します。

一般的に日本では、経済産業省による

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立する”

という定義が用いられています。

ポイントは、単なるITシステムの導入や活用にとどまらず、組織など企業全体の変化を必要とするという点で”デジタル化”とは異なるということです。

結局DXってなぜ必要なの?その理由とは

結論から言えば、日本企業にとってDXとは

  1. 業務フローを改善して、ムダをなくしロスをなくすため
  2. 今後の”儲ける力”を手にするため

に必要とされています。 

「デジタルを活用したら無駄がなくなる」

これは想像に難くないことではないでしょうか。
例えば自動化ツールの活用によって業務がミスなく、また省人化されます。

儲ける力とは?

現代は変化のスピードがとにかく速いと言われています。
イレ・カーツワイル が提唱する2045年問題というのをご存知でしょうか?
日進月歩を続ける人工知能が人間の知能を超えるのが2045年頃だという説です。

その中で「収穫加速の法則」という考え方が唱えられています。
これは、イノベーションの速度は指数関数的に増していく。という考え方です。

例えば、過去10年で起こった変化は今後1年で起こってしまうと言われています。

そんな過激な変化の時代における儲ける力とは”変化対応力”そのものです。
そして必要とされる変化対応力を手にする強力な手法こそがDXなのです。

特に日本でDXが必要とされている

DXを推進することは、”人の力に頼らずにビジネスを回す”=省人化につながります。
少子高齢化が進み労働人口が減り続ける日本において、DXを推進し人力に頼らずに経営をすることは人手不足による経営リスク回避に直結します。

また、当然ですが人に頼らずにビジネスが拡大できれば利益率が向上します。
人件費を削減しつつ、新たにビジネスを拡大しうる施策だからこそ、現代の日本企業においてDXというのは避けて通れぬ重要テーマとなっています。

日本でのDXの現状と人材不足

スイスビジネススクールIMD 世界競争力ランキングによると、日本の世界競争力は第34位(2020年)。
日本企業は今、とても世界で戦えているとはいえない現状にいます。

そのひとつの要因こそ、DXが進んでいないことです。
これは決して日本でDXの重要性が認識されていないというわけではなく、多くの経営者がDXの重要性を認識しつつも、実際のビジネスの変革にはつながっていないのです。

多くの企業はすでに何かしらのITシステムを利用しています。
しかしこのまま既存のITシステムが更新されずに残ってしまうと、現在のシステムに精通したIT人材の引退や古いシステムのサポート終了によって、2025年以降年間最大12兆円の経済損失を生んでしまうと言われています。

これは「2025年の崖」と呼ばれていて今後の世界競争力を日本が獲得できるか否かの分水嶺になるだろうということで経済産業省が中心となり、国を挙げて解決に取り組んでいます。

DX人材は、日本を救う起点になる!

老朽化したシステムから脱却し変化に十分対応できる新たなシステムを導入するには強力なリーダーシップによる推進と、既存のシステムから先端技術そして業務フローにまで精通したDXの実務を担うDX人材が必要となります。

しかし、日本中で需要の高まっているDX人材は2030年には79万人も不足すると言われています。
具体的には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)社会基盤センターのIT人材白書(2019)によれば、IT企業のうちDX人材が不足していると感じている割合は2016年で75.5%、2018年で92%と年々深刻化してきている状況が見て取れます。

さらに経済産業省の試算によれば、2030年には最も悪いシナリオで79万人、最も楽観的なシナリオでも16万人のDX人材が不足すると予測されているのです。

そのため日本では、国を挙げてDX人材の育成に力を入れており2020年からは小学校教育でプログラミング教育が義務化されました。

しかし、それでもDX人材の育成が十分見込めるわけではありません。兎にも角にもDX人材を早急に育成できるかどうかが日本の明暗を分ける状況が続いているのです。

DXに関わる人材の職種とスキル

DXに関わる6つ+αの職種


1. プロデューサー

 DXプロデューサーは、DX人材の中でも「新規事業の構成」「戦略策定」「人材の確保・育成」を担います。社内企業家のようなポジションがプロデューサーと呼ばれています。

2. ビジネスデザイナー

 ビジネスデザイナーとは、プロデューサーの描いたDXの計画をより具体的な形にまで落とし込み、プロデューサーをサポートする役割を担います。

3. アーキテクト

 DXプロジェクトにおけるシステム開発、運用・保守の責任者を担うのがアーキテクトです。DXシステムの基盤を作るためにインフラからDB、ソフトウェアなど幅広いITに対し得ての知見が求められるだけでなく、業務サイドへの造詣の深さも必要とされます。

4. データサイエンティスト

 データサイエンティストは社内におけるデータの収集から取り扱い、分析・活用までを担う職種で技術力はもちろん統計やデータについての専門的な知識が求められます。

5. UXデザイナー

 UXとはユーザーエクスペリエンスの略で、インターフェースだけでなくシステムのユーザ体験そのものを向上させるデザイナーです。

6. エンジニア

 システムエンジニアはもちろんシステムについての専門知識が求められますが、DX推進においては専門職種だけでなくビジネスサイドを巻き込んだ変革が求められているため、専門外のビジネスサイドへの理解度が特に求められます。

+α 育成対象 

 これは当たり前の話ですが、人材不足の日本社会で上記のようなDX人材を経験者だけで揃えるのは現実的ではありません。
また、DXには自社ビジネスや自社の組織文化への造詣の深さが非常に重要だからこそ、自社の人材を主戦力としてDX人材へと育成することが重要なのです。

DX人材に必要な大前提と3つの要素


大前提:氷山モデルを理解する

 氷山モデルをご存じでしょうか?氷山モデルというのは、「氷山の一角」という言葉の通り他人から見えるものは一部に過ぎないことを表したフレームワークです。

 特に技術者のスキルに関する場合、「業績・成果」や「スキル」は”見える部分”に「行動特性」や「モチベーション」「適正・資質」は”見えない部分”に分類されます。

 だからこそエンジニアのスキルセットというとITの知識や資格といった要素に着目されがちですが、その専門スキルをDXの現場で発揮して成果に結びつけるためには総合的なヒューマンスキル・ビジネススキル・マインドセットが重要になります。

要素① マインド 

 <90日泥臭くやる>
 DXという言葉は華やかに聞こえるかもしれませんが、実際はその真逆です。
 これはIT全般でも言えることですが、特にDX人材にとっては現場との関わりが強いためその傾向が強いです。

 さらに、多くのプロジェクトは最初の90日で成否が決まると言われています。
 だからこそ、どんなに泥臭くてもまずは90日やりきる、その実行力がDX人材には必須なのです。

 <リーダーシップ>
 DXというのは企業の一部門のシステムを一つ入れ替える、というものではありません。
 全社を横断的に、そして現場の行動まで深く理解し変革をもたらすプロジェクトです。
 ただ、いくら経営陣が望んでいたとしても他の部門や現場がDXに協力的とは限りません。
 そんな環境下で各部門の長や現場と粘り強く対話し続け動かし続ける推進力が必要となります。

 <経営者マインド>
 DXは会社の一部の短期的なプロジェクトではないため、DX人材には全社視点を持ち、長期利益と共に短期利益のことも考える視点が必要になります。
 それはまさしく経営者に必要とされている観点で、まずは経営者と同じレベルに立つというマインドを持つことが大切です。

 <現場を理解する力>
 DXにおいては”現場を理解する力”=”相手を知る力”が非常に重要です。
 IT畑の人間だからと言って現場の業務や心情を理解しなければ全社組織を巻き込んだ変革は起こせません。

要素② コミュニケーション

先述の中に”泥臭く会話し続ける”力が挙げられていました。
これは、コミュニケーション力の中でも高次元のスキルです。
相手が自分に対して好ましい印象を抱いていない・短期的に利害が一致しない、そんな状況下でも諦めず、粘り強く対話し続け関係を構築し、DXへの協力を取り付けるコミュニケーション力が必要になります。

要素③ 専門スキル

 DX人材の専門スキルとしては下記の3つなどが挙げられます。

  1. 基礎的なITスキル
  2. データ分析・活用スキル
  3. UI・UXなどのデザインスキル

それぞれの職種やポジション、業界業種などによっても異なる部分があるため一口にDX人材といってもその会社に併せたスキルが必要になるでしょう。

DX人材になるための資格

DX人材にこれからなるという方向けにDXに役立つ主たる資格をご紹介します

  1. AWS認定資格
  2. Python 3 エンジニア認定資格
  3. 認定スクラムマスター
  4. ITストラテジスト試験
  5. プロジェクトマネージャ試験
  6. データスペシャリスト試験
  7. ITコーディネータ

DX人材になるのにこれらすべてが必須というわけではないので、必要に応じて取得すると仕事に活きるでしょう

DX人材育成のポイント

現場で活躍してくれるDX人材とは、どうしても”実戦経験”の量がモノを言う世界です。
だからこそまずは、そんな成長できる現場に立つ資格を得ることが重要な第一歩です。

その後の育成は、”学び続ける環境”があるかどうかに左右されます。
デジタルやその活用法は常に変化しており、知識を常にアップデートする事が求められます。
また、業務変革やDXは一過性の取り組みではなく、その企業の”当たり前”が変化するのが理想です。

育成といってもただeラーニングを受講させれば良いという話ではなく、上司や経験者からのフィードバックの場、社外のコミュニティへの参加など、より実践的な育成環境が成長の角度を決めるといっても過言ではありません。

DX人材の採用のポイント

スキルを持ったDX人材は日本中どの企業でも不足して、一方的な需要増加の状況が続いています。
その市場感を理解し、貴重なDX人材を採用するに値するリソースを確保する必要があるでしょう。

「全国で引っ張りだこなDX人材とは中小企業では出会えないのか」
結論から言えば中小企業が大手企業を出し抜いてスキルを持ったDX人材を採用するには、給与待遇や仕事の環境から言っても相当不利な立場にあると言わざるを得ません。

では、どうすればいいのか。
”DX人材になれるポテンシャルを持った人を採用し育成する”
ポテンシャル採用こそが中小企業のDX人材人材確保に一番適した手法なのかもしれません。

一般的にはポテンシャル採用はその後のスキル育成コストが高く、また定着率によっては活躍する前に転職されてスキルと経験だけを持っていかれてしまったりもします。

ですが、DX人材というのは仮に経験者を採用しても、その企業の文化や業務を理解するまでに育成時間が必要です。
だからこそ、将来会社の根幹を担ってくれる人材を採用し、DX人材として育成することでDX人材の確保だけでなくその企業の文化に基づいたDXの成功ももたらしてくれる施策と言えます。

最後に…DXこそが日本を救う

日本はバブル以降、長い間不景気に直面してきました。

一時期は世界経済の中でも類を見ないほどの存在感を示していた日本は、今では見る影もありません。

そんな前時代的体質を引きずっていては今後、日本はこのままのペースで衰退していくでしょう。

この暗い見通しを打開するだけのインパクトがDXにはあります。

DX人材を育成し、日本中でスムーズに時代に対応できるだけの土壌が整えば、再び日本が経済大国に返り咲く明るい未来が訪れるかもしれません。

この記事を書いた人

田中康之

YAZ / 代表取締役CEO
出会う人とビジネスを通じて、ITエンジニアとビジネスの新しい可能性を追求し続けています。