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転職市場(中途市場)はますます激化し、転職者のニーズも多様化しています。転職者が転職先に何を重視し、どのような見極め方で決定しているのかを理解することが、「選ばれる企業」となるための第一歩です。
この記事では、転職者の「転職のきっかけ」や「転職先の決め手」といったニーズついてご紹介。そのうえで、選ばれる企業となるには「求人原稿の作り込み」が特に重要とされる理由について解説します。
(1)年代別・男女別で見る転職理由
そもそも転職者が「転職活動をスタートさせるきっかけ」とは何なのでしょうか?
「なぜ転職しようと思ったのか」転職を決断する理由は多岐にわたりますが、年代や性別ごとに異なる特徴があります。株式企業マイナビが発表した「転職動向調査2024年版(2023年実績)」を参考に見ていきましょう。
20代:成長を求めて
20代は、キャリアのスタートラインであることから、仕事を通して「成長の機会」や「市場価値の向上」を求める傾向が強いです。そのため、「仕事内容に不満があった」といった理由が男女ともに上位を占めています。
また、女性は「休日や残業時間などの待遇に不満があった」が転職理由の2位となっています。近年、若い世代を中心に「ワークライフバランス」を大切にする人が増えています。特に女性は、結婚や出産といった大きなライフイベントを見据えて、働き方をより重視する傾向があると考えられます。
30代:安定性と生活の充実
30代は、キャリアアップを目指しながらも「家庭や生活の安定」を求める、つまり「待遇・福利厚生」を重視する人が多くなる年代です。そのため男女ともに、「給与が低かった」「休日や残業時間などの待遇に不満があった」「働く環境に不満があった」といった理由が全体平均よりも上回っています。
ここからさらに男女に分けて見ていきましょう。
男性は「企業の将来性、安定性に不安があった」という理由がランキングの上位を占めました。30代男性は、他の年代に比べて「転職率が最も高い傾向」にあります。30代に入ると、多くの男性がプライベートでの立場の変化を経験し、そのタイミングで将来を見据え、「長く働ける環境」を求める価値観へと変化していきます。その影響から企業の経営状況などを重視していると考えられます。
一方女性は、「職場の人間関係が悪かった」ことを転職する理由として挙げています。女性は「待遇・福利厚生」と「人間関係」が両立できるところで働きたいというニーズがあることがわかります。
40代以上:キャリアの集大成を求めて
40代以降は、「これまでの経験を活かし」つつ、「無理なく働ける環境を重視」する傾向にあります。そのため男女ともに、「身に着けたスキルを活かせる仕事」を他の年代以上に求めており、これまで培ってきた経験やスキルを存分に発揮できる環境であるかどうかが、重要な判断基準となります。
男性では、「企業の将来性、安定性に不安があった」が給与が低かったといった退職理由と同率でトップとなりました。経営の安定性や企業のビジョンも大きな判断材料になることが分かります。
女性の場合は、「仕事内容に不満があった」「職場の人間関係が悪かった」「休日や残業時間などの待遇に不満があった」といった働き方や待遇に関する理由が他の年代よりも割合が高い傾向にあります。これは、仕事と家庭の両立や体力的な負担を考慮するからであり、メンタル面・身体面ともにストレスなく、無理のない勤務環境を求めていることが分かります。
(2)転職先に求める条件とは?
転職者の心理として、転職は少なからず心労の大きいものであるため、「転職=何度もしたくない」という思いを誰しもが抱きます。それでも、転職を決意すると、「次の転職では失敗したくない」と強く願うものです。そのため、転職者は転職先に「前職での不満を払拭すること」を望むのです。
次の転職先への希望条件は、大きく「企業軸」「仕事軸」「環境・待遇軸」「お金軸」「人軸」の5つに分類できます。それぞれの軸を持つ転職者に対して、伝えるべきポイントや使うべきキーワードを見ていきましょう。
企業軸
企業の将来性や経営の安定性、理念に共感できるか否かなどが「企業軸」に該当します。
前述の通り、特に30代以降の男性が重視する傾向にあります。企業軸の応募者に対しては、中長期的な自社の将来ビジョンや想い(存在意義)を明確にしたうえで、魅力を伝えることが採用成功へのカギとなります。
<参考:関連キーワード>
安定した業界、黒字経営、最新技術への投資、新規事業拡大、海外拠点、上場企業、創業年数、業界シェア率、顧客数、企業の存在意義・使命、地方創生、平均勤続年数、役員の男女比率、社員数 等
仕事軸
仕事のやりがいや使命、達成感などが「仕事軸」に該当します。やりがいやキャリアアップを求める20代~30代の応募者に響くポイントです。
また40代以上では、応募者のこれまでの経験スキルをどう活かせるポジションなのか具体性をもって提示することが有効となり、「あなただからうちの企業ではこんなに活躍できる!」と、「あなたにしか出来ない!」とアピールすることが重要です。
<参考:関連キーワード>
経験を積める、未経験歓迎、キャリアアップ、スキルアップ、経験や知識を活かせる、職種、業種、言語や語学を活かせる、資格取得補助、資格を活かせる、意見やアイデアが反映されやすい、裁量権、新規事業、専門性、チームプレー、スペシャリスト、ゼネラリスト 等
環境・待遇軸
待遇や福利厚生、各種制度など個人の「働きやすさ」につながるものが「環境・待遇軸」に該当します。近年ではワークライフバランスの考え方の普及などから幅広い世代で重視されています。「心身ともに健康で」「安心して」「長く働くことができる」ことを前面に出して魅力を伝えましょう。
また環境・待遇軸には、各種研修制度や評価制度も含まれます。入社後研修や各役職ごとにスキルアップを促す研修が他社と比べて手厚いものだったり、頑張りが正当かつ公平に評価される評価制度があれば、自社の特徴魅力につながります。
自社で働く社員のモチベーション向上に関わる部分となりますので、今一度、自社の研修・評価制度について、洗い出してみるのも良いでしょう。
<参考:関連キーワード>
■休日・休暇等
年休120日以上、月平均残業時間、完全週休二日制or週休二日制、GW休暇、年末年始休暇、アニバーサリー休暇、生理休暇、産前産後休暇(実績記載)、育児休業(実績記載)、介護休業(実績記載)、看護休暇、定時退社、年間有休取得日数(率) 等
■待遇等
PC貸与、定期健康診断、社員旅行、社員寮(社宅)、勤務地、転勤がない、通勤手段(自動車、自転車通勤可など)、リモートワーク、時短勤務、副業 等
■制度・研修
評価制度、360度評価制度、フレックス制度、教育研修制度、入社時研修、内定者面談 等
お金軸
年収や賞与、手当等の経済的な条件が、「お金軸」に該当します。
全世代で転職理由の上位を占めているため、企業側は応募者のスキルや経験に見合った給与を提示することが求められます。また給与だけではなく、関心が高い待遇・福利厚生、仕事内容などの魅力とかけあわせ、応募者には総合的に説明することをおすすめします。
<参考:関連キーワード>
給料(基本給)、固定賞与、業績賞与、残業代(みなし残業含む)、昇給、職務手当、職能手当、役職手当、資格手当、ほか特別手当、インセンティブ報酬 等
人軸
代表や上司、メンバーの人柄、チームの雰囲気、社内の人間関係などは「人軸」に該当します。
入社してからでないと見えづらい部分もありますが、社内の雰囲気やカルチャーを求人表に記載したり、面接時に関係者に同席させたり、カジュアル面談や会社見学を実施することで、ミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
<参考:関連キーワード>
代表・上司の想い、メンバー紹介、メンバーの前職経歴、所属先の平均年齢、年齢層、男女比、新卒既卒比、未経験スタートの割合、文化風土(カルチャー) 等
(3)求職者の決め手とは?
ここからは、求職者が転職先を決定する際に重要視しているポイントを、下記表を参考に見ていきましょう。全体的に「給与」や「働きやすさ」に関する理由が転職先の決め手の上位を占めています。
このうち男性は、「新たなキャリア・スキルを身に着けられるか」「企業に将来性や安定性があるか」を重要視する人が多い傾向にあります。男性には自身や家族の生活をより豊かにしつつ、自己の市場価値を高めたいというニーズがあることが分かります。企業としては、自社の将来的な展望や期待している役割を伝えつつ、給与や働きやすさやも併せてアピールすると良いでしょう。
女性は、「福利厚生」といった待遇面なども上位にランクインしています。その企業で「心身ともに健康」で「長く働けるか」というポイントを踏まえ、求職者に魅力を伝えましょう。
また女性の場合、職場の人間関係や仕事内容に不満を覚えているといった理由が全年代で上位を占めていました。
具体的にどのような仕事を任せたいのか、職場の環境やどのような社員が働いているのかをリアルに伝えることで「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐことが期待できます。
(4)選ばれる企業のこだわりポイントは「求人票」や「求人原稿」、「画像」
求人原稿の作り込みが重要な理由とは?
ここまで転職理由や転職の決め手といった求職者のニーズを紹介してきましたが、求職者に自社を知ってもらう最初の機会(初回接触)は求人票や求人原稿です。第一印象がその後の採用活動に大きく影響するため、しっかり作り込みましょう。
では求職者に対して自社の魅力を効果的に伝えていくにはどうすればいいのでしょうか?効果的な手段の1つが、「求人票 または 求人原稿」を「求職者がイメージしやすいように作りこむ」こと。そしてなるべく画像を使うことで求職者に「働くイメージ」を湧かせることです。
「求人票」と「求人原稿」の違いとは?
「求人票」は、求人に記載しなければならない「必要最低限の情報を記載したもの」です。
一方、「求人原稿」とは、必要最低限の情報に加えて、自社の強みや特徴魅力などを作り込んだものを指します(これをジョブディスクリプションとも言います)。具体的には、企業理念、代表の想い、募集する部署のより詳細な仕事内容、風土や一緒に働く人々についてなどが含まれます。
求人を掲載する媒体によっては文字数制限や、記載できる項目が決まっていたりすることもありますが、なるべく求職者目線かつ作り込まれた求人票・求人原稿を目指しましょう。
求人は多くの求職者にとって企業を知る最初の機会であり、第一印象を左右するため、応募のきっかけを作る重要な場となります。まずは入り口となる求人を丁寧に作り込むことが、「選ばれる企業」となるためのカギとなります。
「とりあえず求人を作成」となっていませんか?
「今まで先輩たちが作ってきた通りにやっている」
「求人媒体側に任せっきりにしている」
なんてことはありませんか?
求職者のニーズに沿わない求人票・求人原稿では、応募が来なかったり、運よく入社しても早期離職してしまうといったケースにつながります。また、ターゲット以外からの応募であれば、採用担当者の対応が増え、それが負担増となることもあります。求人はただの宣伝文ではなく、企業と求職者を結びつける重要な接点です。求職者ニーズを踏まえ、読み手にイメージさせることのできる求人票・求人原稿を作成することで、ターゲットとなる人材を引き寄せることが可能となります。
そして、文章だけでなく「画像」にもこだわりましょう。画像は視覚的に情報を与えるため、重要な役割を果たします。
・職場の魅力を一目で伝えられる画像になっていますか?
・笑顔がないなど、マイナスな印象を与えかねない画像となっていませんか?
・画像が暗いかったり画質は荒くありませんか?
求職者がどのような情報を知りたいのかを意識しながら、魅力的な画像を反映することを心がけましょう。
上記を意識した求人原稿や求人票を作り込むことで、求職者にとっても自身のスキルや経験、適性を最大限に活かせる職場かどうかを判断しやすく、安心して応募することができるでしょう。
(5)まとめ
専門家に見てもらうのもアリ
求職者のニーズと転職の決め手についてご紹介してきました。ぜひ取り入れられそうなポイントやキーワードを、自社の求人に反映させてみてください。
自社に大きな特徴魅力があったとしても、求職者に伝わらなければ意味がありません。年代別・性別ごとのニーズを把握して、自社がターゲットとしている層の心を動かす求人票・求人原稿を目指しましょう。
「どうしていいかわからない」と迷ったときは、採用コンサルタントをはじめとした人材系の専門家にアドバイスを求めるのも一つの手です。専門家は、求職者のトレンドや市場動向を把握しており、より的確なアピールポイントを提案してくれます。また、第三者から自社を見てもらうことで自社ならではの新たな特徴魅力に気づくこともできるでしょう。
今回を機に、自社の求人や求人原稿を見直すとともに、採用活動の在り方について見直してみませんか?