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2000年代に起こった第三次人工知能ブーム以降、少しずつ生活者にとって身近な存在となりつつあるAI。家電製品をはじめAIの技術を搭載した商品も多く見受けられ、ビジネスシーンでもAI活用が進んでいます。こうした状況下でAIに関連する情報が求められるのは、IT業界だけではありません。
業界や業種を問わず、AIの知識は多くのビジネスパーソンにとって必要不可欠なものとなるでしょう。
そこで今回は、AIの歴史や応用されている技術を含む、AIの基礎知識をお伝えします。また、産業別の活用事例もご紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
AIとは?
近年、ビジネスシーンでも度々話題となり、注目され始めた「AI(人工知能)」。そもそもAIとは、どのようなものを指すのでしょうか。まずは、AIの定義や種類などの押さえておきたい基礎知識をお伝えします。
AIの定義
AIとは、人工知能を意味する「artificial intelligence」の頭文字を取った用語です。しかし、AIという用語に明確な定義はなく、一般的には「人間に近い知能を持ったコンピューター」といった形で、人工的かつ知的な振る舞いをするものとして解釈されています。最近では、データサイエンスの普及や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にともない、ビジネスシーンや消費者生活においてAIが活躍する場面が多くなっています。
現段階では技術的な問題が多く残されているものの、AIが人類にもたらすメリットは未知数です。一方で、人工知能が人類を超える「シンギュラリティ(特異点)」と呼ばれる概念もあり、人間にしかできないことがAIに代替されれば、生活が大きく変化するとも考えられています。
AIの種類
- 特化型AI
特定の処理に対処して、より効率的な処理方法を自動学習するタイプのAIです。該当領域においては、人間を上回る処理能力を発揮するケースも存在します。
特化型AIの応用場面として挙げられるのは、将棋・囲碁・チェスなどのゲーム、画像認識、音声認識、自動運転などです。
- 汎用型AI
特定の課題のみに対応するのではなく、人間同様に多様な状況を把握・判断し、その場で最適な処理を行うタイプのAIです。汎用型AIは、2021年時点ではまだ実現化されていません。
未来には技術的な問題を乗り越え、幅広い場面で活躍する汎用型AIの登場が待たれています。
AIの歴史
世界で最初にAIが提唱されたのは、1950年代のこと。当時から現代までに、三度の人工知能ブームが起こっています。ここでは、第一次~第三次人工知能ブームに触れながら、AIの歴史を解説します。
第一次人工知能ブーム
アメリカの計算機科学者ジョン・マッカーシー教授が「AI」という言葉を作ったのは、1956年のことでした。その後、1960年代より「第一次人工知能ブーム」が到来します。AIの登場によって、問題提示に対してコンピューターが自律的に探索・推論を行い、解を導き出せるようになったのです。
第一次人工知能ブームのAIは「単純パーセプトロン」と呼ばれます。しかし、当時のAIでは社会の複雑な問題解決までは対応できずに、1970年代に一旦ブームが去ることとなりました。
第二次人工知能ブーム
1980年代に入ると、時代は第二次人工知能ブームへと突入し、いよいよAI技術が実用可能レベルまで引き上げられました。このとき、単純パーセプトロンの発展系である「多層パーセプトロン」が登場します。多層パーセプトロンでは、AIの知識エンジンと推論エンジンを分離することで、データベースの構築などが可能となりました。
ところが、当時のAIにはまだ不便が多く、結果として実用化には至りませんでした。そこで課題となったのは、AI自身が自動的にデータを収集できない点、AIに利用可能なデータが少ない点などです。こうしたデータ活用の難点からAIの進化自体が伸び悩み、1995年頃に再度ブームが去ることとなりました。
第三次人工知能ブーム
第三次人工知能ブームが始まったのは、2000年代のことです。この頃からAIが急速に進化を遂げ、社会への応用範囲が拡大し始めました。このようにAIの急速な進化を支えたのが、ビッグデータとオートエンコーダ技術を利用した「ディープラーニング」の手法です。ディープラーニングとは、ニューラルネットワークを複合的に活用した、AIが行う学習方法のこと。
ニューラルネットワークは、人間の脳の神経細胞から考案された数値モデルです。一方で、ディープラーニングに欠かせないビッグデータは、多種多様なデータが蓄積された巨大データベースを指します。自動的に重要度の高い情報を選定し、不要な情報を排除するオートエンコーダにより、AIで膨大なデータを取り扱えるようになりました。
第三次人工知能ブームは、2021年現在まで続いており、今後のAI技術の動向に今なお注目が集まっています。
AIが行う機械学習とは?
現在、AIが注目されるきっかけとなった「ディープラーニング」は、機械学習の手法の一つです。ここでは、AIの機械学習についてご説明します。AIと関係性の深い機械学習の基礎知識や、学習方法の種類について押さえておきましょう。
機械学習とは?
機械学習とは、AIが自ら学習し、プログラミングされた内容以上の処理を実現可能にすることです。現代のAIにおいて中核を担う技術で、英語ではMachine Learningと呼ばれます。ICTおよびビッグデータの利用環境が整備されたことで、実用化レベルまで引き上げられました。
機械学習の根幹の一つに、前述のニューラルネットワークがあります。機械学習には複数の手法があり、それぞれ学習プロセスや得意とすること、AI活用による可能性などに違いがあります。
機械学習の種類
- 教師あり学習
問題と模範解答を用意し、データとして同時に読み込ませる学習方法です。正否のデータを大量に読み込ませることで、学習していない内容でも推測して回答できるようになります。教師あり学習は、「回帰」と「分類」の作業に向いている方法といえます。回帰とは、過去のデータを基に数値の将来予測を行うことです。
平均気温や売上の予測などが挙げられます。一方で、分類とは学習データを基にカテゴリ分けを行うことです。色の判断のほか、購入見込みの有無の予測などが該当します。ディープラーニング(深層学習)の多くは、教師あり学習の手法に含まれるとされています。
- 教師なし学習
模範解答を用意せずにデータを読み込ませる学習方法です。明確な模範解答のない問題に対処でき、さらには未知の価値を発見できる可能性が広がります。教師なし学習の代表的なアルゴリズムとして挙げられるのが「クラスタリング」です。クラスタリングでは、読み込ませたデータからAIがパターンを検出し、自動でグループ分けを行います。
人間がグルーピングの例を提示する必要はありません。ほかにも、データの次元を下げることで特徴を抽出する「次元削減」も、教師なし学習の代表例です。ビジネスシーンでは、主にマーケティング分野での活用が期待されています。
- 強化学習
AIの行動に対して報酬を与えることで、報酬を最大化する行動を学習させる方法です。こうした強化学習の特徴は、よく動物の調教に例えられます。調教においては、動物が好ましいとされる行動をしたとき、餌(報酬)を与えて良い行動を教え込みます。
強化学習では、AIが試行錯誤しながら報酬スコアが高くなる方法を自分で学習することで、行動が導き出され最適化される仕組みです。強化学習を行ったAIは、ゲームなどの分野で高い成績を残し、世界的な注目を集めました。
AIにより進化した主な技術
AIの登場によって、既存のテクノロジーの利便性が向上したケースも数多くあります。技術をAIと組み合わせることで、より高度な処理を実現できるようになりました。ここでは、その代表例をご紹介します。
画像認識
画像認識は、コンピューターに読み込ませた画像を元に、そこへ含まれる顔・物体・文字などを認識させる技術です。大量のデータをコンピューターが高速で処理し、さらにはAIのパターン認識により自動で特徴を抽出できるようになりました。従来は人間が目視で識別していた作業を自動化することで、業務負担の軽減につながっています。
AI技術を用いた画像認識は、倉庫内での仕分け作業や、金融機関での書類審査、駐車場の監視などで実装されています。
音声認識
音声認識は、AIが音声を認識し、内容に応じた処理を自動的に行う技術です。人間の音声を抽出し、テキストデータへと変換します。議事録の自動作成のほか、コールセンターの品質評価、聴覚障害者向けの会話システムなどの用途が代表的です。
また、仕事の業務効率化をサポートするアプリケーションなど、最新の企業向けソリューションでも活用が始まっています。後述の自然言語処理と組み合わせることで、スマートスピーカーなどの商品でも活躍している技術です。
自然言語処理
自然言語処理は、人間が日常的に使う「話し言葉」を理解し、意味を解析する技術です。日本語や英語など各言語の文法に応じて意味を解析し、指示内容の通り処理を行います。前述の音声認識で生成されたテキストデータを意味ある文章として認識するために必要な技術です。
掃除ロボットなどのIoT家電、スマートフォンの音声アシスタント機能、問い合わせ対応を自動で行うチャットボットなどに採用されています。多くのユーザーに使用される身近なサービスに機能が搭載され、年々精度が高まっています。
【産業別】AIの活用事例
最後に、AIがビジネスシーンにおいてどのような用途で役立てられているのか、現状の活用方法をご紹介します。今後も技術の進歩にともないAIの活用範囲が広がり、さらなる業務効率化やコスト削減に寄与するかもしれません。近年のAI活用から、その可能性を読み解いてみましょう。
農業
農業分野では、AIを搭載したドローンによる農薬散布が始まっています。画像認識機能を備えたAIにより、害虫を特定した場合のみピンポイントで農薬を撒く仕組みです。AIが散布する農薬の量を自動で調整するため、従来と比較してコスト削減などの効果が期待されています。
また、人力での散布よりも危険が少なく、効率化により作業時間の短縮を実現できるのもメリットです。
漁業
漁業分野では、AI搭載の魚群行動解析システムが、魚の食欲を分析・予測するうえで役立てられています。AIが算出したデータを元に、適切な量の餌を自動散布するのが特徴です。システムを利用すれば、初心者でも簡単に餌の散布に取り組みやすくなります。
また、魚の餌不足や食べ残しの回避にもつながり、人件費や餌代といったコストを削減できるのが魅力です。
金融業
金融業では、融資の審査や不正検知などの幅広い場面でAIが活用されています。審査においては、AIがローン申込者のデータから信用リスクを客観的に評価することで、リスク回避や審査期間の短縮につなげています。
また、クレジットカードやキャッシュカードの利用パターンをAIが学習し、詐欺や不正な取引を検知。調査の工数を削減しながらも、サービス利用者の安全を守る効果を生んでいます。
小売業
小売業では、需要予測にAIが採用されています。過去の販売実績のほか、気候などの条件に応じてAIが最適な商品数を算出。多くの経験を要する発注業務の効率を高め、商品の廃棄や販売機会損失を最小限に留めるために役立っています。
また、店内に設置したカメラの映像を解析し、顧客の購買行動を分析する取り組みも、効果的なプロモーションを実現するとして注目されています。
不動産業
不動産業では、物件の空室リスクに備えてAIの活用が始まっています。対象エリア内にある大量の物件データをAIで分析すれば、入居希望者に選ばれやすい条件を抽出可能です。空室になりやすい物件の設備や環境を改善し、空室対策につなげられます。
また、不動産査定にAIを活用すれば、客観的かつ信頼性あるデータに基づき、物件の適切な価格を見極めることが可能です。
飲食業
飲食業では、店舗運営業務の負担を軽減するAIの導入が進んでいます。店舗で提供するメニューの価格設定をAIにより自動化。原価や人件費を考慮した適切な値付けで失敗を防ぎ、安定した売上獲得を目指します。店舗の来客数をAIが予測し、仕入れやシフト管理を最適化するシステムも効果的です。
過去の来店数や売上データのほか、気候などの条件を踏まえ、確度の高い判断に役立てられます。
建設業
建設業では、安全管理やメンテナンスなどの場面で徐々にAIが活用され始めています。現場での作業には多くの危険がつきものです。作業員の安全を守るために、特定の作業で発生する確率の高い事故やミスをAIが検索し、参考になる情報の周知や業務改善につなげます。
また、道路などのインフラに発生した異常をAIが画像解析で検知し、早期発見するための研究開発も始まっています。
医療業
医療業では、医師や看護師をはじめとした専門家が従事し、これらの職業には多くの専門知識とスキルが求められます。そこで、AIが医療従事者をサポート。医療ミスの予防や診断精度の向上、医療機関における事務作業の効率化などに貢献しています。
また、今後は技術の発展によりAIロボットによる手術や、研究開発分野でのAI活用といった場面で、新たな価値がもたらされると期待されています。
システム開発はAIに精通する企業へお任せください
今回は、ビジネスシーンでも注目されるAIについて解説しました。2000年代から始まった第三次人工知能ブームは、現在まで続いている状況です。2021年の時点で、AIの技術はIT業界に限らず幅広い業界で活用され、次々と新たなサービスが発表されています。
そんな社会情勢のなかシステム開発をするには、AIの最新情報を取り入れ、的確な提案ができる企業を選ぶことが大切です。開発をご検討の際は、ぜひAIにも精通するYAZをご検討ください。