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クラウドコンピューティングが普及し、MicrosoftやGoogleといった世界的な知名度を誇るIT企業が、多彩なサービスを展開しています。なかでも注目を集めているのが、大手ECサイトAmazonが提供する「AWS(Amazon Web Service)」です。数あるクラウドサービスと比較して、AWSにはどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、AWSのサービス内容や利用するメリット・デメリットなどの基礎知識をお伝えします。AWSを用いたクラウドシステム開発を検討中のご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
AWSとは?
ビジネスシーンにおいても、サービスをインターネット経由で配信するクラウドコンピューティングを活用する場面が多くなってきました。まずは、数あるクラウドサービスを利用するうえで押さえておくべき、AWSの基礎知識を簡単に解説します。
AWSの意味
AWSとは、「Amazon Web Service」の略称であり、大手ECサイト「Amazon」が提供するクラウドサービスです。同社は世界中に「AZ(アベイラビリティゾーン)」と呼ばれる多数のデータセンターを有し、AWSは「Region(リージョン)」と呼ばれる複数のデータセンター群によって構成されています。信頼性が高いことから、政府機関や大企業でも利用されているプラットフォームです。
AWSは、各種クラウドサービスの構築および利用に欠かせない基盤としての役割を担っています。その領域はコンピューティングやデータベースのほか、機械学習・ストレージ・セキュリティ・IoTにまで至ります。
AWSの特徴
AWSは、約200種類のサービスをすべてクラウド上で運用できるのが特徴です。初期費用が安価で、かつスピーディーに利用開始できる点で注目されています。低コストでありながら、一般的なクラウドサービスと比較して機能面が充実している傾向にあり、コストパフォーマンスの高さが強みです。
料金体系は従量課金制モデルで、サービスの使用量に応じて課金される仕組みとなっています。ボリュームディスカウントが用意され、ビジネスの規模に応じてお得に利用しやすい点も特徴です。また、AWSの利用者にはサービスの「無料トライアル」や「12カ月間無料」など、各種無料利用枠が用意されています。これらのオファーには有効期限がないため、導入時に限らず幅広いシーンで活用できます。
新たなサービスの導入時には、無料利用枠でサービスを試用すると良いでしょう。世界各国にはAWSの利用者が参加する大規模なコミュニティがあり、ユーザー同士の交流が活発に行われています。多種多様な企業や人が集まることで、ビジネスを相互に成長へ導ける点も特徴といえるでしょう。
AWSをはじめとしたクラウドの方式に対して、自社でサーバーやハードウェアを構築することを「オンプレミス」と呼びます。オンプレミスでは、社内に必要な設備を設置し、運用やメンテナンスまで社内で担うのが特徴です。従来の情報システム構築では、オンプレミスの方式が主流でした。
しかし、近年ではAWSをはじめとしたクラウドコンピューティングの普及にともない、オンプレミスのデメリットが懸念されています。たとえば、クラウドと比べて初期費用や保守管理費用が高額な傾向にあり、さらには導入から運用開始までに多くの時間がかかりやすい点は短所といえるでしょう。
導入の際は、両者のメリット・デメリットを踏まえたうえで、自社のニーズに適した選択ができると理想的です。
AWSは2006年からサービスを提供していますが、2021年10月現在に至るまで業界トップシェアを維持しています。クラウドコンピューティングを牽引する存在として、注目され続けているサービスです。なお、AWS以外の代表的なクラウドサービスとしては、Microsoftが提供する「Microsoft Azure」や、Googleが提供する「Google Cloud Platform」などのクラウドプラットフォームが挙げられます。
クラウドサービスの主な分類
AWSのサービス形態は、大きく「PaaS」「SaaS」「IaaS」の3つに分類されます。ここでは、それぞれのクラウドサービスの特徴や、代表的なサービス例などをご紹介します。
PaaS
PaaSは、「Platform as a Service」の頭文字を取った略語です。Webサーバーやデータベースの構築といったシステム開発に必要なプラットフォーム一式を、クラウド経由で提供することを指します。利用者はクラウド上のプラットフォームでシステム開発を行うことが可能です。
後述のIaaSとは異なり、クラウド事業者によってミドルウェアが用意されているため、システム開発の工数削減が期待できます。AWSのサービスのなかでは、開発中のアプリの動作確認ができる「AWS Lambda」が該当します。
SaaS
SaaSは、「Software as a Service」の頭文字を取った略語です。従来はパッケージで販売されていた製品やサービスを、クラウド経由で提供することを指します。SaaSを利用すれば、WebアプリケーションやWebサービスなどをオンライン上で手軽に使えるようになります。その際、PCなどの端末へインストールする必要はありません。
また、複数人でのデータ共有や、クラウドストレージへのデータ保存が可能です。AWSの代表的なサービスとして、ストレージサービスの「Amazon S3」が挙げられます。
IaaS
IaaSは、「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った略語です。仮想化技術を利用し、サーバーやストレージ、ネットワークリソースをクラウド経由で提供することを指します。システム開発に必要なインフラ部分のみ利用するのが特徴です。
製品やサービスそのものを提供するSaaSと比べると、IaaSは自由度が高いといえます。その一方で、利用するユーザーには高度な知識やスキルが求められます。AWSでは、仮想サーバーを構築および利用できる「Amazon EC2」が代表例です。
AWSの主なサービス内容
AWSでは、仮想サーバーの構築やデータのバックアップなど、企業のIT環境において重要な各種サービスが用意されています。自社のビジネス推進に役立つ最新のウェブサービスをチェックしてみましょう。
仮想サーバーの構築
AWSを利用すれば、目的に応じてサーバーを構築できます。仮想サーバーの構築で用いられるサービスは、「Amazon EC2」や「Amazon Lightsail」などです。Amazon EC2はエンジニア向けのIaaSで、必要な機能を自身で選定して組み込む必要があります。
一方、Amazon Lightsailでは簡易的なサーバー構築に必要な機能がパッケージ化されており、ノウハウのない初心者でも利用しやすい点が特徴です。なお、AWSに構築された仮想サーバーは「Instance(インスタンス)」と呼ばれます。
データのバックアップ
AWSのクラウドには膨大な容量のデータをバックアップできます。バックアップで利用可能なサービスは「Amazon S3」です。こちらのオンラインストレージは、パフォーマンスとスケーラビリティに優れ、提供されるストレージクラスの幅広さが特徴となっています。
また、AWSのデータセキュリティサービス「Amazon Macie」と連携すれば、AIがより機密性の高いデータを特定し、自動で保護することも可能です。
AI機能の活用
AWSのAI機能は、AIによる学習をビジネスシーンで活用できるのが特徴です。サービスの例として、「Amazon Personalize」が挙げられます。こちらは、AWS独自のパーソナライズレコメンデーションサービスです。特定の顧客に対して、興味関心を持つ確率が高い情報をAIが学習し、提供する仕組みとなっています。本来は専属のマーケターが行うマーケティング施策を自動化できます。
Webサイト運用
AWSのホスティングソリューション「Amazon Lightsail」では、スムーズなWebサイト運用が可能です。特に、WordPress・Drupal・JoomlaなどのCMS、LAMP・LEMP・MEANなどの開発スタックでWebサイトを構築する場合に適しています。
一方で、HTMLやJavaScriptなどを用いた静的Webサイトの運用には、「AWS Amplify コンソール」のようにシンプルなホスティングソリューションが最適です。
ビッグデータ分析
AWSの大規模なインフラを利用すれば、テラバイトやペタバイトといった大容量のデータを容易に取り扱えるようになります。膨大なデータから価値を引き出す、ビッグデータアプリケーションの構築が可能です。
ビッグデータの処理および分析では、サーバーレスな超高速クエリサービスの「Amazon Athena」や、ビッグデータを迅速に処理するプラットフォーム「Amazon EMR」など、多彩なサービスが提供されています。
データベース運用
AWSではクラウドでのデータベース運用を叶えられます。フルマネージドサービスのため、プロビジョニング・パッチ適用・バックアップなどの作業は不要です。運用の負担を減らし、システム開発へリソースを集中できます。
サービスはタイプ別に用意され、リレーショナルデータベースなら「Amazon Aurora」、ドキュメントなら「Amazon DocumentDB」といった形で、目的に応じて選択可能です。
動画コンテンツ配信
AWSのソリューションを組み合わせることで、費用を抑えながら動画コンテンツ配信サービスを始められます。配信に活用できるサービスとして、高速コンテンツ配信ネットワークの「Amazon CloudFront」、動画変換サービスの「AWS Elemental MediaConvert」などが挙げられます。
安全かつ高速での配信を実現し、充実したオンデマンドコンテンツの提供に役立てられるでしょう。
AWSを利用するメリット・デメリット
AWSはセキュアに使用でき、低コストなためスタートアップなど中小企業にも適しています。その一方で、カスタマイズの自由度が低いことから、自社の要望を詳細に反映するのは難しいと考えられます。メリットとデメリットを踏まえたうえで、導入をご検討ください。
メリット
- セキュリティレベルが高い
AWSは数あるクラウドサービスのなかでもトップレベルのセキュリティ強度を達成しています。信頼性の高さには定評があり、各国の政府機関や金融機関、大手企業で導入された実績があるほどです。セキュアな開発環境の確保につながります。
- 低コストで導入しやすい
AWSの初期費用は、基本的には0円に設定されています。利用料金は従量課金型で、使った分だけ支払う仕組みのため、必要以上のコストが発生する心配がありません。クラウド関連サービスの導入および運用コストの削減につながります。
- データ障害に強い
AWSは世界各国にデータセンターを設置しています。万が一通信障害が発生した際は、別のサーバーへ処理を分散させて実行する仕組みとなっています。自社システムやサービスが通信障害による影響を受けにくく、リスクヘッジになるため安心です。
- 人的リソースを削減しやすい
AWSでは豊富なITリソースが提供され、システム開発に必要な環境を容易に調達できます。開発者用ツールも充実し、人的リソース削減の効果が期待できます。社内のリソース配分を効率化し、ビジネスの生産性向上を目指せる点もメリットです。
- ハードウェアのメンテナンスや更新の手間を省きやすい
クラウドサービスのAWSを利用すれば、ハードウェアの調達は不要です。初期投資の負担を大幅に減らせるのはもちろん、ハードウェアのメンテナンスや更新といった、ランニングコストや手間がかかりません。従来よりも柔軟にITインフラを整えられます。
デメリット
- カスタマイズの自由度が低い
AWSはオンプレミスのような細かな調整や個別対応には適していません。自社の要望を詳細に反映させる必要がある場合、カスタマイズでは対応し切れないことも。導入の際は、事前に必要な機能を精査し、AWSで調整可能か確認しておくことをおすすめします。
- 月額料金が変動しやすく、予算を立てにくい
AWSは料金体系が従量課金制のため、無駄な出費を抑えやすい反面、月額料金が月ごとに大きく変動する可能性があります。固定料金と比べて予算を立てにくい点はデメリットといえるでしょう。
- ダウンタイムが発生するおそれがある
AWSに限らず、各種クラウドサービスではシステム障害などの原因で停止し、ダウンタイムが発生するおそれがあります。このようにクラウドサービスが稼働できない期間、自社システムやサービスへの影響は避けられません。ダウンタイムのリスクに留意しておきましょう。
- 使いこなすには一定の知識が必要になる
AWSの各種サービスを使いこなすには、サーバーやネットワークに関する基礎知識が求められます。AWSの公式サイトのなかには、一定以上のITスキルを前提とした解説も少なくありません。社内にITの専門家が不在の場合は、専門の企業へAWSを用いたシステム開発を依頼するのも一つの手です。
AWSでのクラウドシステム開発もお任せください
今回は、大手ECサイトAmazonが提供するクラウドサービス、「AWS(Amazon Web Service)」についてお伝えしました。AWSは低コストで導入しやすい点がメリットですが、各種サービスを使いこなすには一定以上のITスキルが必須です。
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